2012年度は、マウス腹腔から採取した、接着性の高いマクロファージを用いて、細胞の冷凍保存の困難さについての理解を促す実験系を中心に開発した。マクロファージは、A~Cの3群に分け、A群はメディウムに分散させた状態で組織培養用ディッシュに撒き、B群は同メディウムに分散させた状態で液体窒素を用いて一旦凍結・解凍した後にディッシュに撒き、またC群は細胞凍結用に工夫されたメディウムに分散させた状態で同様に凍結・解凍した後にディッシュに撒いて、いずれも1時間程度培養し、細胞の接着の程度を比較した。結果として、ディッシュに接着する細胞数はA群>C群>B群となることを確認した。この順は細胞の「活きの良さ」順を反映していると考えられる。この実験は単独でも有効だが、既に検討済である細胞モデルとしてのイクラを用いた凍結融解実験の結果と合わせると、凍結に伴って細胞が受けるダメージについての理解が容易になると考えられた。そこで動物細胞を培養する設備が乏しい教育現場においても実施が可能なように、廉価な材料(エアーコンプレッサー、大型プラスチックコンテナ、食品保存用プラスチック容器、シリンジなど)を用いて、簡易型クリーンベンチと簡易型CO2インキュベーターを作製し、この実験での使用に耐えることを確認した。 一方、2011年度より作製を試みていた、生物由来の一つの試料から同時に複数の酵素活性を検出するザイモグラフィーのためのアガロースゲル電気泳動装置を、幅広の病理検査用スライドグラスを用いて完成させた。これは、幅広のゲルに試料をのせて電気泳動後、電気泳動方向に沿って短冊形に3本以上に切断し、各々を異なる方法で酵素を検出した後で並べれば容易に比較分析できるものである。この装置は、電極に白金線を用いず、電源も含めて全て廉価な材料で作製可能なことが特徴で、教育現場において特に有効であろうと考えられた。
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