本研究では、生命体の保存の難しさおよび生命体由来のタンパク質それぞれの分子に固有の性質および機能があることを理解させるための実験系の開発を中心に行った。生命体の低温保存の困難さを体感できる実験教材の開発として、イクラや除殻したウズラ卵の凍結解凍実験を行う際の条件について調べた。等張の緩衝液に漬けた卵の凍結解凍後では卵のほとんどが破裂したが、グリセロール等を含む緩衝液中に浸した多くの卵は凍結解凍後に破裂しなかった。これに加えて、私たちは生きている細胞であるマウスの腹腔マクロファージを用いて、凍結解凍の条件を検討した。凍結解凍処理後、通常の培養液中の多くのマクロファージは破裂していたが、凍結保存用の溶液中の大多数のマクロファージは破裂せずに培養皿に接着していた。細胞の「活き」は培養皿への接着状態から把握できるので、これらを組み合わせた実験は、細胞の低温保存の困難さを示すために適切と思われる。次に、タンパク質それぞれの分子に固有の性質および機能があることを理解させるための実験に関しては、私たちは幅広スライドグラスを用いてゲル電気泳動法を改良し、そして、それを複数の酵素の同時検出のためのザイモグラフィーに応用した。この他に、DNAの可視化等の実験についても改良もしくは実施方法に関して再検討を加えた。
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