研究概要 |
平成21年度中に準備した問題冊子6種類(合計26題の大問,内冊子共通問題8題を含む)を使用し,13大学1382名の学生を対象に「数学コンピテンシーテスト」を行った。また,その結果を素点合計点及び項目反応理論(2母数モデル)で解析して得た能力値によって分析した。全26題中には若干の適切性に欠ける問題があったが,ほとんどは適切な問題であったと考えられる。問題別正解率も約10%~95%の間に幅広く分布し,受験した学生達の数学力の多様化を捉える上で全体として適切な問題構成であったと評価できる。各冊子とも記述式の解答を求める問題を多く出題し,数学的言語を使用しての説明能力を調査する事が出来た。他方,記述式解答の採点のために非常に多くの時間と労力を要し,採点と一応の統計処理が終了したのが23年2月になったことは,得られたデータを活用しての数学コンピテンシーに関する研究分析や23年度調査の作成に悪影響を与えた。採点の負担をある程度軽減する手法の開発が望まれる。 採点・統計処理の終了を待たずに,いくつかの問題に関する解答の分析を行ない,大学入学者の数学コンピテンシーに関する考察を行った。 三角形の面積公式の根拠を説明させる問題では,「長方形」あるいは「平行四辺形」と書くべき所を単に「四角形」とするなど,用語の正確さに問題がある解答が多かった。数学的な言語力が十分でない学生が多くみられるのではないか。その他数学的な思考力や論理力に関する問題でも興味有る結果が得られている。2010年10月30・31に開催した30名余りが参加した研究会で,これらの論点に関する検討を行った。このほか,3大学約20名の学生に対するインタビュー調査を2010年12月に行った。結果は未公表。
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