2010年と2011年に実施したアセスメント(テスト,質問紙調査)の結果を分析した。 その結果第1に,テスト結果の統計処理と問題・解答の分析から調査対象の学生達が,数学的知識と認知スキルの達成度によって4つの水準にほぼ等分されることがわかった。さらに,最上位の水準は別の基準で2文された。作成された問題数は必ずしも十分でなく,一層の充実が必要であるが,大学入学者の数学的な能力を測定する尺度が本研究の手法で作れることを示されたと言える。 第2に,記述式解答を求める設問の詳細な分析とテスト全体の採点結果を照合することにより,思考力・表現力など“コンピテンシー”と呼ばれる能力について洞察を深めることができた。これにより,本研究の成果を踏まえて教育の改善を直接目指す研究を行う上で一つの方法を開拓したと言える。 第3に,質問紙調査の自由記述回答の分析により,入学者達の数学に関する意識の概要を把握できた。また,質問紙調査とテストの結果の重回帰分析によって,学力は所属大学の設置者や規模,学力入試による入学かどうか等の制度的要因に大きく影響されるが,この影響を制御してもなお様々な学習方法を面白いと思うかどうかによって有意な影響を受けることがわかった。他に,9種類の学習方法を「面白い」と思うかどうか5段階で調べた結果をクラスター分析,多次元尺度法,因子分析などによって分析し,これらの学習方法に関する学生達の意識や,学力との関係を明らかにすることができた。例えば,公式学習は計算練習と非常に似た印象を持たれているが,比較的に言語的性格が強いと思われている事が判明した。 これらの結果の多くを,2つの国際学会と5つの国内学会で発表した。他に研究会としての総括的な会議を開催して,公的には未発表の成果を含む瑋まとめの報告と検討を行った。また,2013年度に開催される2つの学会での発表を準備した。
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