「学習とは何か」についての認識である学習観は教授手法・授業シナリオ・教材の開発・成績評価・学習スタイルに本質的な影響を及ぼすと考え,物理教育の改善のためは,先ず学習とは何かを認知心理学における学習理論の変遷をベースに確認し,それらを足場として物理学教育・学習を検討した。その上で,力学教育において「Wiiリモコンを活用した授業」の学習理論的意義と効果について検討した。 千変万化する自然現象は少数の基本法則で記述できるという認識(科学的自然観)の養成を目的とする力学教育の確立を目指して,Wiiリモコンを加速度センサーとして活用して,現象と法則・数式を紐付ける教材と授業シナリオを開発した。その際には,学生が持つ既有知・素朴概念・誤概念に配慮するなど認知科学と学習理論の知見も考慮した。特に,L. McDemottらによる,直接的な経験か観察をもとに,その題材の定性的な理解を発達させることから始めることで,概念的理解を促進し,機能的理解に至るという指摘に基づき「Wiiリモコンを活用した授業シナリオ」を再検討した。 ①公開用サーバーを稼働させた。(http://buturi.hiro.kindai.ac.jp/wii/)②Wiiリモコンを加速度センサとして活用した加速度モニタリングソフト(Wii加速度メーター)を開発し,上記サーバーで公開した。③Wii加速度メーターを活用して,力学現象と法則・数式を紐付け,自然認識として力学法則を認識することを目的として授業シナリオを制作し公開した。④認知科学と学習理論の知見を基に,自然認識の学問としての物理学学習の足場を選択し提示する(curation:キュレーション),Webページを制作し公開した(http://buturi.hiro.kindai.ac.jp/EduCurate/)。
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