教育用パーソナルコンピュータTaCのオペレーティングシステム(TaC-OS)開発と,これを実行するためのハードウェアと言語処理系の改良,教育用の特殊機能の実装,ドキュメントの整理を行った. ハードウェアの改良では,まず,機械語命令にバイト配列を扱うアドレッシングモードを追加した.FATファイルシステムをTaC-OSに実装するためにバイト単位でのデータ処理が不可欠なためである.これに伴いメモリ空間の大きさが従来の64kWから64kBに変更された.次に,メモリ空間の縮小に対応するために,4bit定数や4bitオフセット等のアドレッシングモードを追加した.最後に,CPUに実行モード(特権・非特権)を持たせるために特権モード専用のスタックポインタの追加,PSWに特権ビットの追加,特権命令の追加等を行った.ハードウェアの改良に伴い,C--コンパイラ,アセンブラ等を改良する必要もあった. オペレーティングシステムの実装は,前年度までに旧TaC上で開発した組込み用OSにマルチメディアカードのドライバを追加し,また,バイト配列を用いるように書き換え,組込み用OSとして一応完成した.今後,汎用OSとして進化させる予定である. 教育用の特殊な機能の実装では,ソフトウェアの支援なしにコンピュータ内部を観察することが可能なコンソールパネルをTaCに実装した.これを用いるとOSの内部までステップ実行が可能である.既に,TaC-OSの開発で威力を発揮しており,学生が学習用に使用し効果を上げることが期待される. ドキュメントの整理では,組込み用の「TaC-OSのユーザーズマニュアル」を新規に作成した他,「C--言語のマニュアル」と「TeC(8bitモードの教育用コンピュータ)の教科書」を改訂した他,情報処理学会コンピュータと教育研究会にて改良後のTaCのハードウェア仕様について報告を行った.
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