本研究は、地域基盤型医学教育(CBME)の推進のための基礎資料として、既にこの形式の教育に従事しているプライマリ・ケア医が医学生・研修医指導を行う上での動機、ニーズ、障害に関して、直接、現場の声をくみ上げる形のインタビュー調査によるデータ収集と分析を目的としている。H22年度は、北海道でCBMEを担う医師5名を選び、診療を行いつつ教育に従事する際のニーズと障害について半構造化面接を行った。場所は各医師の所属機関の個室で、時間は1回当たり各30~60分程度。データ収集と分析は交互に行い、逐語化されたデータは、個人情報を全て匿名化し、目的に合致する部分の内容を、意味のわかる最小の形に区切り、類似内容を集約しカテゴリー化した。分析は研究者2名が独立して行い、最終的に全員の合意を得た。その結果、プライマリ・ケア医が求めるニーズは、(1)非金銭的報酬(大学からの表彰状や学生からのフィードバック及び感想文)、(2)金銭的報酬(診療時間を削られる分の給与)、(3)報酬以外(後輩医師を育てられるというやりがい)に分類された。また、教育上の障害は、(1)時間的・物理的多忙(診療負担や雑用が多く教育に時間が割けないこと)、(2)職種間連携(他職種の協力が得られず教育について医師負担が増えること)がカテゴリー化された。考察として、ニーズはより非金銭的報酬を求めるようだった。これは先行研究とも一致し、地域の医師を金銭的に援助するだけでは不十分であることが示唆された。また、教育上の障害について、医師のみに学生の教育を頼るのは限界があり、さまざまな医療従事者の関わりが必要なことただ地域の医師数を増やすだけでなく、多職種連携の重要性が示唆された。今後、当初の計画に従ってフォーカスグループにて、さらに議論を深めていく。
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