地域社会へのESD 導入における社会参加アプローチの有効性の検証のため、以下の5項目について検討した。 (1)試作した社会参加ESDプログラムの問題点の抽出と改良 (2)改良した社会参加ESD プログラムの実践と改良前のプログラムとの比較 (3)モデル地域の環境問題および非持続性についての問題解決計画の妥当性の検証と修正 (4)地域環境問題を事例とするESD における社会参加アプローチの有効性の検証(5)ESD に社会参加アプローチを導入する場合の課題の考察 ・項目(1)(2)については、過去に実施したESD青年環境サミットでは、高校生が提案した地域環境政策を自治体首長に送付するだけであったが、平成24年度にはサミット成果である環境アピールを地域住民の「ラムサール・シンポジウム」で社会的に公表し、学習者の社会参加がいっそう深化した。 ・項目(3)(4)については、過去3年間にわたるESD実践の結果、当初立案した大沼地域の環境問題および非持続性問題の解決計画が妥当であったと結論された。そのことは渡島大沼が平成24年国際ラムサール条約湿地に新規登録されるにあたり、継続的にESD実践に取組み自然環境が賢明に利用されていることが推薦理由にあげられたこと、さらに環境モニタリングの結果から本研究開始後に水質改善傾向が現われたことからも支持された。 ・項目(5)については、本地域における組織的課題の存在が考察された。大沼地域では自然環境の保全と賢明な利用をはかるための「地域ラムサール委員会」の権限、活動計画が定まっていない。今後は大沼地域の持続的発展を担う中心組織を支える手法の開発、とりわけ環境についての専門性をもつ地域人材の発掘と組織化が注目されており、環境研究者と自治体職員を核とする恊働組織の形成と評価が重要な役割を果たすものと期待されている。
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