研究課題/領域番号 |
22500847
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
吉冨 友恭 東京学芸大学, 環境教育研究センター, 准教授 (20355829)
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キーワード | 水族館 / 河川博物館 / 巡回展 / 展示デザイン / 展示評価 / 魚類 / 河川 / 環境教育 |
研究概要 |
本研究では、水族館や河川博物館に巡回する展示ユニットを対象として、展示の評価・検証を行うことにより展示の質の向上を図り、わが国に多数存在する河川に関する展示施設に有効な巡回展示ユニットのデザイン(題材設定、内容、手段)を検討する。また、巡回のプロセスを辿りながら巡回展に求められる観点や要素を抽出し、巡回展を多くの施設において実現するための事項についても検討する。今年度は巡回企画展「川と海を旅する魚たち」を対象とした(1)展示評価と改善点の抽出(岐阜県博物館)、(2)展示改善と改善効果の検証(千歳サケのふるさと館)を行った。(1)では、観察法と面接法を組み合わせて利用者の反応を分析し、展示の問題点や有効な要素を抽出した。改善点としては、利用者に操作方法が伝わっていないこと、展示のねらいが正確に伝わっていないこと等が確かめられた。また、掲載情報が難解、展示装置が上手く機能しない等の要因も認められた。一方、利用者に身近なテーマや馴染みのある物事との関連が理解や興味に繋がること、実物やレプリカが興味を惹くこと、簡潔な文章や簡単な操作が好まれること等が確かめられた。これらは比較的簡易な構造の改変により実現できるものであり、巡回プロセスにおいて改善・導入可能な項目であると判断された。(2)では、上述の結果をもとに展示の改善を行い、その効果を検証した。その結果、展示の改善により利用者の反応が展示制作者の意図に沿ったものとなり、理解や関心も促進されることが確かめられた。改善効果の傾向としては、小型パネルの追加等の小規模な改善よりも、新たな装置の導入や展示の構造的な改変等の大規模な改善の方がより大きな効果が得られることが示された。今年度の取り組みにより、巡回展に求められる要素や観点を見出すことができ、巡回展示のプロセスにおいて展示の評価・検証を行うことにより、段階的に展示の質を向上できる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
巡回展示ユニットを対象として、展示の評価・検証を実施したことにより、展示の質の向上を図るための題材設定、内容、手段に関する多くの要素や観点を見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
巡回を前提とする場合、展示を多くの施設において実現するための事項についても検討していく必要がある。今年度は、新たに巡回を開始する企画展「ゲリラ豪雨展」を対象として、展示プロダクト(規模、形状等)の要件、運搬や設営・管理に必要とされる環境や支援体制等について明らかにするための調査を進めていく。
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