本研究は,理科における科学的表現力育成の立場から,web上において,理科の自由記述問題の回答を自動で評価するシステムの開発を行うことを目的とした。システムは,asp .netを用いて作成しWindowsサーバー上で動作するものである。理科の記述問題は,TIMSS2007の小学生用と中学生用の問題,各12問を対象にしてきた。今年度は,これに加え,小学生用3問,中学生用4問を新たに作成し,回答事例を得てシステムに追加した。システムは,問題に回答すると,自分の回答が自己組織化マップに位置づけられ,その位置づけられたセルの色や近隣の色から正誤について評価ができるものである。また,自分の回答に近い回答が近隣に配置され,近隣のセルをクリックすると回答例が参照でき,正誤の判断を行えるようにしている。たとえば,自分の回答が誤答の場合,近くの正答を参照することによって,正しい考え方や表現の仕方を学ぶことができる。一方,自分の回答が正答と判断されても,近くの正答からよりよい回答を得られる場合がある。また,自分が正答であっても,近くの誤答を参照することにより,誤答において考えの誤っている点や表現の不十分な点を確認することができ,正しい回答についての考えを深めることができる。さらに,自分の回答と遠くに位置付けられている正答の回答例を参照することにより,自分とは異なる表現や考え方の正答も確認でき,表現の仕方や考え方を広げることができる。現在システムは一般に公開し,運用を行っている。本システムの発展的な活用について,本システムではいろいろな正答や誤答の回答事例を参照できるため,それをもとに授業設計や指導に役立てることもできると考えられる。また,本システムは,自由記述の回答について,理科に限らずあらゆる教科に応用できると考えられる。
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