本研究は、疑似科学や超常現象に対する信奉を、科学知識の不足による非合理な思考という側面のみでとらえるのではなく、適応的な認知バイアスの影響下にあることを、質問紙調査と認知心理学の実験的指標を組み合わせて明らかにすることを目的とした。該当年度には、質問紙調査を中学校生徒111名、現職教員148名を対象に行った。この調査では、情報処理における「自己奉仕バイアス」を中心として、その他「あいまいさへの不寛容」「科学への態度」などの指標を測定した。多変量解析の結果から、超常信奉と適応的な認知バイスの間の関連性が推測される結果を得た。しかし、用いた質問尺度の改良の必要性も示唆される結果となり、これを改良した上で翌年度に再度調査・検討を行うこととした。また、認知心理学的な実験指標としては、確率的な現象に対して自己のコントロール力が及ぶ錯覚(コントロール幻想:illusion of control)を測定した。男女76名の大学生被験者を対象として、コントロール幻想の諸側面を反映する三つの実験課題を実施し、あわせて超常信奉や抑うつ傾向に関する質問紙に記入を求めた。その結果、超常信奉の因子である「スピリチュアル信奉」の高さが、行為と結果の随伴性にかかわるコントロール幻想と正の相関を示すことが明らかとなったが、「疑似科学信奉」はコントロール幻想やその他の指標との関連性は見いだすことができなかった。これらの結果は、翌年度の日本心理学会第75回大会において報告することとした。
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