研究概要 |
使い捨て用途およびエネルギー・環境教育用の教材として使用可能な低コスト太陽電池の作製方法を開発することを目的とし,安価なチオフェンの電解重合によって形成されるポリチオフェンをベースとした有機薄膜太陽電池を作製した.無置換のポリチオフェンは不溶性のため重合後の成形加工は困難であるが,電解重合法により電極上に薄膜として析出させることができる.バッファー層としてPEDOT:PSSをコートしたITO電極上に2.0V(vs.Ag/Ag^+)の定電位を印加してポリチオフェン膜を電解析出させた後,0.0V(vs.Ag/Ag^+)の電圧を印加してポリチオフェン膜を菅完全に脱ドープした.シリコンカンチレバーを用いた原子間力顕微鏡観察により,ポリチオフェン膜表面にはnmオーダーの無数の孔が存在することが明らかとなった.可溶性のフラーレン誘導体であるPCBMのクロロベンゼン溶液をポリチオフェン膜上に滴下し,一定時間静置後にスピンコートし,その上にアルミニウムを真空蒸着して大きさ4mm角のデバイスを作製した.ポリチオフェンの膜厚を最適化することによって,擬似太陽光照射下(AM1.5G,100mW/cm^2)で最大15%のエネルギー変換効率が得られた.この最適化デバイス断面の走査透過電子顕微鏡(STEM)観察およびX線マイクロアナライザー(EDS)分析を行った結果,ポリチオフェン層とPCBM層の間に両者が混ざり合った中間層が形成されていることがわかった.この中間層は,ナノポーラスな表面構造をもつポリチオフェン層内にPCBM溶液が浸透し,溶媒の揮発によってPCBMがポリチオフェン層内部に残留したことによって形成されたと考えられる.これにより両者の間に部分的な相互侵入構造が形成され,単純な積層型デバイスより高いエネルギー変換効率につながったと考えられる.
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