アメリカのミドルスクールで用いられている理科教科書を調査して,生物教育カリキュラムの具体化を調べた結果,特に科学的な方法に関連して次のような知見を得た。①科学的な方法は,実験の結果やまとめ,学習の振り返りの批判的な思考においてスキルの種類がわかるように提示され,具体化されていた。②提示されていたスキルは,プロセス・スキルズと同様のカテゴリーを含んでいたが,概念の応用,コンセプトマップの作成等のスキルも提示されていた。前年度までの高等学校生物における調査結果と総合して分析した結果,ネットワーク型構造化の鍵として次の4点を抽出することができた。1.生物学的な系統性の具体化:学習の最初や終りで鍵となる概念・知識・用語を提示して学習内容の要点を明確化し,学習内容の説明で関連する内容やスキルを適宜挿入する。2.科学の方法による構造化:観察実験を通した学習において,必要となる科学的なスキルを明記し,単元間で同じ種類のスキルを結び付ける。3.観察実験の種類や方法に基づく構造化:観察実験を目的や方法によって類別し,教材との組み合わせを吟味して配置する。4.学習の文脈:教科書の文章中における学習事項の位置づけ方で学習内容の間のリンクを導く。 日本の生物教育におけるネットワーク型構造化モデルについては,光合成を例にして小学校,中学校,高等学校におけるキーワード,キーワード間の関連,既習領域からの展開と他の学習領域への展開を示す関連図を作成した。また,各学校段階における学習のポイントの違いと,科学概念との関連性も具体化した。今後,他の学習内容についても同様のアプローチで関連図を作成する予定である。構造化モデルの活用については,大学生による単元の構造化モデルの作成や教材開発を行ったが,ネットワーク型構造化がまだ十分に完成していないため,教員養成や教育実践における効果は十分な検証が行えなかった。
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