研究課題/領域番号 |
22500862
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研究機関 | 公立はこだて未来大学 |
研究代表者 |
田柳 恵美子 公立はこだて未来大学, 共同研究センター, 教授 (30522114)
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キーワード | 技術者倫理 / 技術倫理 / 倫理教育 / 態度変容 / 役割意識 / 社会的責任 / 社会的認知 / 質的データ分析 |
研究概要 |
本研究は、理工系大学生向けの技術者倫理教育を、社会的認知能力の形成という側面を重視した学士にふさわしい人格形成教育として再構築することを目指したものである。情報系の学部4年生必修講義の実踐を通じたアクションリサーチとして、1.学生が技術者倫理に対してどのような態度を有し、その態度は講義を通じてどのように形成され変容するかを学生が記述したテキストから分析し、2.得られた発見事項から、学生の技術者倫理に対する態度や役割意識といった社会心理的性向について、概念化・理論化を図るとともに、3.学士課程にふさわしい技術者倫理教育の1つの実践モデルを提示することを目指している。 平成23年度は、初年度に引き続き、技術者倫理の講義実践で得られた知見をベースに、学生のミニエッセイ・とレポートの記述データの質的分析に取り組み、研究成果を論文にまとめた。具体的には二者択一のディベート形式によるミニエッセイの中から、社会的態度の形成において強いジレンマを克服しなければならない事例に着目し、倫理的ジレンマを乗り越えるために学生がどのように社会的態度を構築しているかを分析した。学生が示した様々な態度の成分分析や、それらを組み合わせたより高次な態度形成についての分析を行った。当初の計画どおり、これらの研究成果を論文としてまとめ、国内学会での発表、学会誌への論文掲載、さらには海外の国際会議でのポスター発表を行うことができた。 加えて、本研究の成果を"企業の社会的責任活動における技術者倫理の醸成"というより大きな観点から捉え直し、研究領域を発展させることにも挑戦した。社会的態度変容理論と組織的知識創造理論を融合させた新たな枠組みの下で、組織と個人の両面から技術者倫理を規定する新たなモデルを構築することに挑戦した。この成果を上述の成果と合わせて論文にまとめ、国内会議での発表で萌芽論文賞を受賞した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画どおり、2年目の本年度は調査分析の成果を研究論文にまとめ、国内学会、査読付き学会論文誌、国際会議で発表することができた。これに加えて、研究領域を大学の技術者倫理教育からさらに社会全体における技術者倫理や組織倫理のあり方へと拡大するために、「社会的責任と現代倫理」という大きな枠組みを持ち込み、より学際的・総合領域的な展望の中に本研究を位置づけることに成功し、萌芽論文賞の受賞に結実している。
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今後の研究の推進方策 |
課題の最終年度(24年度)においては、本年度の研究成果をさらに発展拡充させることを目指している。具体的には、当初の計画どおり、教科書として使える書籍にまとめ、本研究の成果を広く情報発信し、大学での教育実践や、さらには企業での倫理教育や生涯学習への活用が可能なかたちにまとめ、広く貢献していく計画である。 また、課題終了後の展開を見据えて、「社会的責任と現代倫理」というより大きな枠組みの下で、本研究をさらに領域提案型の共同研究のようなかたちへ発展させていくことを目指す。
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