研究課題/領域番号 |
22500863
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研究機関 | 公立大学法人北九州市立大学 |
研究代表者 |
野井 英明 公立大学法人北九州市立大学, 文学部, 教授 (60237815)
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研究分担者 |
太田 泰弘 北九州市立自然史・歴史博物館, 自然史課, 学芸員 (00359473)
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キーワード | 環境教育 / 地球科学 / 考古学 / ジオトレイル / 教育効果 / 環境倫理 / ジオパーク |
研究概要 |
本研究は、従来、環境教育では手段としてほとんど顧みられなかった地球科学と考古学、特にこれら領域の見どころを中心とした野外観察の環境教育への応用とその原理、効果の研究を目的としている。現在までに数カ所のジオトレイルを設計し、効果を検討してきたが、今年度は、新たに北九州市小倉北区藍島の地質・史跡を巡るジオトレイルと福岡県豊前町と築上町の境界に位置する求菩提山(くぼてさん)を巡るジオトレイルを設計した。昨年度までの研究により、地球科学と考古学は未来の環境の予測的理解を促す点において、環境教育における効果が示唆されている。藍島のジオトレイルも同様の効果が期待されるが、求菩提山のジオトレイルは、新たに「環境倫理について思い至る効果」を想定して設計した。求菩提山は溶岩と火砕岩からなる急峻で、見るものを圧倒する山容をもつ山で、5~6世紀から山岳信仰の山として知られ、12世紀の始め頃から幕末まで九州を代表する修験道の山であった。現在は当時の建物の跡とともに、豊かな自然が残されている。 環境倫理は、環境問題を考える際に、避けて通れない問題である。人間中心主義と人間非中心主義が対立的に議論されていたのは記憶に新しいが、自然の価値の考え方についても、両者の間で異なり、「人間が利用するという観点からの価値」、「人間の利用から離れた、畏敬や驚嘆の対象としての価値」、「自然そのものの存在価値」などの考え方がある。種々の議論がある領域であるが、このような自然の価値について考える機会は、日常生活の中ではほとんどないと思われる。求菩提山ジオトレイルでは、山や森林の神秘性から自然が畏敬や驚嘆の対象となることに気づくことができる。このようなタイプの自然の価値に気づくことは、人間と自然の関わり方に関する色々な捉え方を考える端緒となり、さらに環境倫理を考えるきっかけになるのではないかと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度までに、4地域のジオトレイルを設計し環境教育における効果を検討した。その結果、「未来の環境の予測的理解を助ける」、「環境倫理を考える端緒となる」などの効果があることが示唆された。これらのことから、研究は概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、今年度までの研究で示唆されたジオトレイルの環境教育における効果の検証を充実させていきたい。その際、検証ために実施する見学会において環境教育の効果を検証する方法が課題であり、客観的な検証方法の開発が必要になろうと考えている。 また、ジオトレイルを用いた環境教育をより広範に利用できるようにするために「ジオパーク構想」を練っているが、今後は、より具体的に考えていきたいと考えている。
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