研究課題/領域番号 |
22500881
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
田中 敏 信州大学, 教育学部, 教授 (20171754)
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研究分担者 |
鈴木 俊太郎 信州大学, 教育学部, 准教授 (10548233)
島田 英昭 信州大学, 教育学部, 准教授 (20467195)
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キーワード | わかりやすさ / 動機づけ / 期待理論 / 携帯読書端末 / デジタル教科書 / ページレイアウト |
研究概要 |
本研究は、動機づけの期待理論の観点から、教材の「主観的分かりやすさ」を軸として、探索的および実験的な教育心理学的手法で、学習動機づけを高める方法を具体的に明らかにすることを目的としている。 本年度は、昨年度実施した以下の研究について、学会発表と紙上発表を行った。 第1に、携帯読書端末を事例として、主観的指標にかかわる要因を評価・考察した。携帯読書端末では、Apple社iPadを用いて、文字サイズを操作し、主観的分かりやすさを実験心理学的手法により評価した。その結果、適切な文字サイズ4mm程度を下回る文字サイズでは、拡大操作が頻繁に起こり、主観的分かりやすさを損ねることを示した。本研究の成果は、日本教育工学会第27回全国大会において発表し、日本教育工学会論文誌35巻(Suppl.)に査読付き論文として公開した。 第2に、教材評価の際に用いるような評定尺度質問紙について、そのページレイアウトの違いが分析結果に影響する可能性を実験的に検討した。その結果、質問項目と評定尺度を横置きに配置するレイアウトは、両者を縦置きに配置するレイアウトに比べて再検査信頼性が低く、また評価因子の構造も異なることが見いだされた。この結果は、日本心理学会第75回大会において発表した。 加えて、読書材料の韻律強調レイアウトが読みやすさに及ぼす影響を検討した。ただし、一定の結論を下すまでには至らず、今後の課題が残された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の成果について、学会発表2件と査読付き論文発表1件を行った。特に、査読付き論文発表については、3年計画の最終アウトプットとして想定していたが、2年目で可能になったという点では、研究が進展していると言える。一方で、携帯読書端末や評定尺度など、個別のフィールドで行っている研究を統合するまでには至っておらず、今後の課題が残されている。上記を総合して、(2)おおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
携帯読書端末、紙媒体の読書材料、評定尺度、心理療法場面など、主観的分かりやすさに関する具体的フィールドを設定し、研究を進めてきている。ここまでの2年間では、各フィールドを独立させて、各フィールドの個別性を重視しながら、学術的アウトプットを最大限にするという方策で研究を進めてきた。個別フィールドについては上記のような学術的アウトプットをすでに達成しており、一定の評価ができる。その中で、個別フィールドの独自事情が強いことも同時に予想されつつあり、当初計画にあったフィールド横断的な結論を3年間で下すことは難しいと考えられる。したがって、個別フィールドにおけるアウトプットを最大化することを目指し、残り1年の研究を進めることにして、フィールド横断的な結論は今後の課題としたい。
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