研究概要 |
本研究は,手術に必要な基本手技を学習するシミュレータを題材に,一人の指導医が複数学生のシミュレータによる学習を指導する際の効率の良い手法をシステム化し,その検証を行うものである.本手法では,指導医が正しい手技を行い,その動作をネットワークを介して被訓練医(学生)群が使用するシミュレータ上で同時に提示(再現)し,学生はその動きを「なぞる」ことで学習するというものである. 平成23年度はこれまでに作成した腹腔鏡手術シミュレータ2基を用いて,予備実験を行った.訓練する手技として腹腔鏡手術下での肝臓の圧排をとりあげた.これは胆嚢に対する手術を行う際に,覆いかぶさる肝臓を術野空間を確保できる位置まで適切な力で押し上げる操作である.外科医によるシミュレータの操作により,術野映像と操作データ(力覚データ),及び術具(鉗子)を操作する手元映像を収集し,教師データを作成した.7名の学生被験者に学習させた.学習は,手技映像のみ,手技映像と手元映像,これらに力覚提示(なぞり)を加えた3パターンで2~3日の間隔をあけて行った.ここでは,学習効果の評価は,肝臓の把持位置,圧排後の鉗子位置,タスク遂行時間,主観アンケートで行った.この結果,位置精度,遂行時間で有効性が認められた.この実験から,システムの改良すべき点や1対多で指導した際の学習評価で考慮すべき事項等の知見が得られた.
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