研究概要 |
我々は,高価なサーバ機や大容量ネットワーク設備への投資を行うことなく,多数の学生が同時に使用できる分散型e-Learningシステムの開発を目指している.本研究では,そのために,回線速度に応じたサーバ機能の分担と,回線断による学習コンテンツ消失へ対処するためのバックアップ手法の開発を目標としている. 従来,分散型e-Learningシステムの各ノードはサーバとクライアントの機能を兼ねるもののみであったが,昨年度において,従来のタイプに加えて,サーバ機能を持たないクライアントノードを実現した。クライアントノードは,採点も自ノードでは行わないものと,自分が学習している問題の採点は行うが,他の学習者向けの問題エージェントを引き受けて,他のノードに対してサービスする機能は提供しないものに分類できる.今年度は,ネットワークの回線速度に応じて適切なノードタイプを自動的に選ぶ機能を開発した.これによって,回線速度に応じたサーバ機能の分担が可能になった. データのバックアップ手法については,昨年度開発した,問題エージェントをビット列に変換し(シリアライズ),ファイルに格納する手法と,ファイルから読み込んだビット列をエージェントに再構成し(デシリアライズ),シリアライズした直前から動作を再開させる手法を発展させ,データベースサーバに格納する手法を開発した.これにより,回線断による学習コンテンツ消失が起こった際,データベースサーバからエージェントを再生することができるようになった.データベースサーバをシステム上に複数台設置し,負荷分散を図ることも検討したが,整合性を保つためのオーバーヘッドが大きくなりすぎることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分散型e-Learningシステムを,多様な回線速度に対応させること,学習コンテンツ消失に備えたバックアップ手法を開発することという2つの目標は,ほぼ計画通り実現しつつあるので,(2)と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
回線速度に応じたサーバ機能の分担について,現在は回線速度を絶対速度で判別しているが,他のノードと比べた相対速度で判別するよう改良する.また,LANではなくインターネットに広がった本格的な分散環境にシステムを展開する.バックアップ手法については,バックアップデータの粒度を小さくして差分をとりやすくする,変化がある程度蓄積したときにバックアップを行うといった手法を開発して通信量を小さくすることを試みる.
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