本研究は、小テストなどの短時間使用に適したペンベース携帯端末利用の授業支援システムの開発を主目的とした総合研究である。今年度は5年計画の1年目であり、主として情報収集とペンベース型教材適合基準の策定、及びシステムの試験的な実装を行った。 まず、カナダの初等・中等教育のコンピュータ利用形態を調べた。その結果、特に教科「数学」の様々な単元においてコンピュータが積極的に活用されており、その内容、利用場所、及び利用ソフトウェアを把握することができた。次に、ペンベースのユーザインタフェースを有する教育ソフトウェアについて調査した。Nintendo DSとiPhoneのソフトウェア(アプリ)を中心に調べ、対象となる教育コンテンツの分類を行った。この調査によって、どのようなニーズがあるのかを明らかにすることができた。さらに、これらの調査を元にして、各教科の単元においてペンベース型教材が利用可能かどうかを判断するための「ペンベース型教材適合基準」を策定した。この基準を用いることで、各単元のペンベース型教材適合度を算出できるようになった。この算出方法は、各項目の評価点の単なる合計ではなく、上の調査に基づいた重み付けしたものとなっている。 また、数学eラーニングシステムMathellanの設計とプロトタイプ実装を行った。本システムはペンベース携帯端末をクライアントとして利用することを想定したものであり、上で述べた調査結果から必要となる基本機能を策定した。オープンソースのCMSであるMoodleを拡張し、ペンベース携帯端末からの数式の入力と表示機能、及び関数グラフの描画機能を実装した。数式表示においては、MathMLに非対応の端末に対してもCSSを用いて数式を表示できるようにした。この成果は、数式処理システムのユーザインタフェースに関する国際ワークショップMathUIで発表した。
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