研究概要 |
平成23年度は,提案している問題解決におけるメタ認知駆動学習(metacognition-driven learning)と問題解決における他の学習とを明確に区別した.その上で,既存のメタ認知活動訓練システムをメタ認知駆動学習を支援しているかという観点からを分析した. 1.問題解決におけるメタ認知駆動学習と他の学習との区別 知識を獲得し,それを問題に繰り返し適用することで,知識の手続き化と知識適用の効率が向上する.これはメタ認知活動を伴わずにできる学習である.メタ認知活動を生じさせる方略を獲得し,それを問題解決に適用することを繰り返すことで方略の手続き化と効率的な方略適用が行われるようになる.この学習はメタ認知活動を伴うが,メタ認知活動を伴わない学習と同型な学習であり,メタ認知駆動学習と区別する. メタ認知駆動学習とは,学習者が自分の問題解決を振り返り,その特性を適切な概念で認定することによって,問題解決方略を構成することである.適切なメタ認知駆動学習を行うことができれば,問題解決は促進されることになる. 2.既存のメタ認知活動訓練システムにおける学習の分析 EBS(Error Based Simulation)は学習者の問題解決の誤りを物体の奇妙な動きでフィードバックするシステムである.この物体の奇妙な動きが学習者に自分の問題解決過程を振り返らせるので,優れたメタ認知活動の訓練システムとなっている.EBSでニュートン力学を学んだ学習者に対する聞き取り調査をメタ認知駆動学習という観点から分析した.その結果,調査結果の大半がオペレータとそれによる状態遷移を言語表現したもので,問題解決の特性を認定した概念が不十分であった.これらから,EBSがオペレータとそれによる状態遷移としての振り返りを充分に訓練するシステムではあるが,メタ認知駆動学習を支援していないことを明らかにできた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで概念化されなかった「メタ認知活動を駆動して初めて可能となる学習」をメタ認知駆動学習として概念化し,かつ,それと問題解決における他の学習とを区別することができた.これは,交付申請書に記載した研究目的「メタ認知活動の学習を容易にする訓練環境条件」における「学習」を明確化したことであり,研究は,概ね順調に進展していると言える.
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