メタ認知駆動学習(メタ認知活動を駆動して初めて可能となる学習)のモデルを構築するために,平成25年度は,EBSにおける学習者の問題解決試行を分析した. Error-Based Simulation (EBS)は,学習者が表明した考えをそのままシミュレートするニュートン力学の学習システムである.学習者が誤った考えを表明した場合,EBSは物体の不自然なシミュレーションを提示する.物体の不自然なシミュレーションの提示は,学習者に自分の考えが「不正解」であったことに気づかせ,メタ認知活動を伴う熟考を促すと考えられる.だが,この物体の不自然なシミュレーションは,学習者に物体の不自然な動きを止めるといった浅慮の認知活動を促す可能性もある. EBSの熟考を伴った解決試行あるいは浅慮の解決試行を検出する指標として,試行時間の個人内平均値と個人内標準偏差を用いる.たとえば,熟考した問題解決試行を行った場合には試行時間が長くなり,熟慮を伴わない試行錯誤試行の場合には試行時間が短くなる.また,熟考した問題解決試行に終始した場合には個人内平均値が大きく,かつ個人内標準偏差が小さくなる.試行錯誤試行を繰り返し行った場合には,個人内平均値,個人内標準偏差がともに小さくなる. 分析した結果,適用する法則の深い理解が求められる問題の解決試行においてのみ,事後テスト正解者の試行時間の個人内平均値と個人内標準偏差に有意な相関が見られた.この相関は表面的な類似性のみで解決が可能な問題では見られなかった.この結果は,法則の理解を伴うEBSでの問題解決試行において,意図的に試行錯誤し法則を理解するための情報収集 (短時間の試行時間)やそれらの情報を整理して法則を理解する(長時間の試行時間)といったメタ認知を働かせたサブプロセス試行が存在することを示唆する.
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