研究概要 |
ロールプレイ演習を介してプロジェクトマネジメント手法を実際の現場で使えるようにするために経験豊富なプロジェクトマネージャーと同等な高度な専門能力を有するソフトウェアエージェントを開発する.研究課題は,(1)仮想プロジェクトに登場するステークホルダーの役割を割り当てられたエージェントがステークホルダーの利害を最大にする理想の行動を推定する,(2)エージェントに性格とステークホルダーの役割意識の強さを付与し,それらを基に行動の動機と感情の強さを算出し,それらの強さで推定された理想の行動を変更する,(3)演習者とエージェントの行動に合わせてロールプレイ演習のシナリオを自動的に生成する,である. 平成23年度は,(1)仮想プロジェクトで発生する問題解決にあたり、ロールプレイ演習者が意思決定した解決案を評価する方法,(2)仮想プロジェクトの状況に対応して演習者が提示する解決案の代替案を提示する方法,(3)演習者の意思決定と仮想プロジェクトの状態を入力として,演習者に提示するシナリオを変更する機能,(4)演習者の取り組み態度を実時間でモニターして,ロールプレイ演習者へメンターの役割を担うソフトウェアエージェントあるいは教員がアドバイスを行う方法を開発した.これらの機能を実現したシナリオ自動生成できるロールプレイ演習を学部3年生が行った結果,役割を演じる際に自己裁量の範囲が広がり,取り組みの意欲が高まったとの評価を得た.また,ロールプレイ演習中の演習者の行動を実時間でモニターすることで,教員が時機を逸せず指示できることを示した.本取り組みは,情報処理学会情報システム教育コンテスト(ISECON2010)にて最優秀賞を得た. 平成24年度は、ロールプレイ演習者が仮想プロジェクトで起きる問題を抽出,対策立案,実行,そしてモニターする意思決定サイクルを回すことで,意思決定力を向上させるロールプレイ演習システムを開発する.また,ロールプレイ演習中の演習者の行動ログと獲得したスキルレベルとの関係を表すモデルを構築する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ロールプレイ演習における演習者の行動と仮想プロジェクトの状態を実時間で評価する機能を実装し,論理的にあらゆる状態に仮想プロジェクトが遷移できる方法を確立できた.また,実際にロールプレイ演習を行った結果,自己裁量の範囲が広がり学習意欲向上に寄与できることを確認できた.以上より,所期に目論むシナリオの自動展開の可能性が確認でき,これからの1年でプロジェクトマネジメント教育に適用して有効性を客観的に示すことに専念できる.
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今後の研究の推進方策 |
ロールプレイ演習者が仮想プロジェクトで起きる問題を抽出,対策立案,実行,そしてモニターする意思決定サイクルを回し,意思決定力を高めるロールプレイ演習システムを開発する.平成23年度は仮想プロジェクトのあらゆる状況をシナリオに記述することで,論理的にはロールプレイは自動的に生成されるシナリオに従いすすむことが確認できたが,シナリオが膨大になり現実的ではない.この問題を解決するために,プロジェクトマネジメントの知識体系(PMBOK)の知識ネットワークで仮想プロジェクトの状態を表しそれを演習者に提示する方法を開発する.知識ネットワークは仮想プロジェクトをシミュレートするものである.
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