本研究は、e-ラーニング学習環境で提供されるウエッブページ教材の学習者を対象に、ウエッブ構造マイニングにより知識抽出を行って学習者の理解モデルを推定する方法を確立し、学習者との相互作用をこれまでよりも多様に行えるようにすることを目的とする。具体的には、1.学習者のページ参照関係をノードとエッジで構成した状態遷移モデルに構造化して、 2.学習者の症状(誤理解など)を観察して遺伝子機能推定をはかるノックアウトスタディを適用し、3.参照ページの状態遷移関係からターゲットに選んだページを欠損させる (ノックアウト)ことにより、4.学習者に予想される症状の推定を可能にするような、理解モデルマイニングを提案する。 22年度は1.と2.について研究を進め、ウエッブ学習者の多数の参照履歴の統計処理による状態遷移モデルの分類し、プラットフォームプログラムを完成させた。実際に150名以上の受講学生データを分析し、成果を Global Learn Asia Pacific 2011 で論文発表した。23年度はこの結果を分析し、学生のアンケート結果も加味してシステム機能の再構築を諮った。すなわち、3.と4.については、ノックアウトとテスト結果を関係付けることによって誤理解のもとになる知識 (ページ)の参照関係の抽出を行うインパス駆動支援を可能するには、学習者の理解の曖昧さや参照関係の複雑さから、膨大なデータ分析を必要とし、支援方法を確立しても学習者が支援結果を適切に活用できそうにないと判断した。そこで24年度は、学習者の大量の状態遷移データをもとに学習の継続が困難となった学習者に対して、これまでの学習遷移過程にもっとも近い状態遷移データ候補を検索して、学習者に提示する方法を確立した。プラットフォームを改良し、システム評価を行った結果、高い有用性が示せた。この成果はSITE2013円卓会議で説明した。
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