研究課題/領域番号 |
22500917
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中村 泰之 名古屋大学, 情報科学研究科, 准教授 (70273208)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 数式処理 / eラーニング |
研究概要 |
本研究では,Web上での数式の取り扱いに重点をおき,数式処理ソフトウェアを応用した,数式評価可能なオンラインテストを含むWeb教材を開発すること,および,それらを用いてサーバ上にシステムを構築し,LMSとの連携を実現することによる,自然科学系教育に有効なeラーニングシステムの開発を目的としている。24年度の研究計画としては,数式評価可能なオンラインテスト教材の開発,クライアントとして携帯情報端末を視野に入れた教材の開発,実際の実験と対応したシミュレーション教材の開発,をあげていた。 これらの目的の達成,計画の遂行のため,昨年までに引き続き,イギリスのバーミンガム大学で開発された数学オンラインテスト・評価システムであるSTACK(System for Teaching and Assessment using a Computer algebra Kernel)の教材(オンラインテスト)の蓄積を行い,さらに,新しいバージョンへの対応を考慮しつつ,日本での利用を念頭においたシステムの改良を行ってきた。教材の蓄積については,STACKの問題をより効率的に行うための,昨年までに作成した支援ツールのプロトタイプを完成させた。支援ツールはExcelとVBAを活用したもので,利用者にとって馴染みの深いインターフェースであることに加え,オフラインでの問題作成が可能であり,また,学生の解答に応じて適切なフィードバックを与える機構である,ポテンシャル・レスポンス・ツリーの構成を容易にするためのツリー形状の可視化を実現することができた。 また,携帯情報端末を視野に入れた教材として,iBooks Authorで利用可能な電子教科書のプロトタイプを完成させることができた。つまり,電子教科書の演習問題としてSTACKを利用するものであり,電子教科書とLMSとの連携という新しい方向性を見いだすことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度の研究計画の一つであった,教材開発の一つとして,実際の実験と対応したシミュレーション教材の開発について,十分には達成できていないが,それ以外は順調に遂行され,新しい着想に基づいた研究も進められていることから,研究計画に照らし合わせた研究全体の遂行状況としては,おおむね順調に進展していると言える。 特に,我々が日本に初めて導入した数学オンラインテスト・評価システムであるSTACKのシステムの,バージョンアップにともなう国際化を視野にいれた日本語化は順調である。それと同時に,教材としてのオンラインテストの問題作成も,作成支援ツールを開発することにより,問題作成スピードが上がった。また,問題を共有するという発想に基づき,問題バンク(問題データベース)の構想を検討していることろである。さらに,携帯情報端末での利用を想定して,電子教科書の練習問題としてSTACKを活用するという新たな着想に基づいた,STACKの新たな利用方を導入することができた。
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今後の研究の推進方策 |
数学オンラインテスト・評価システムであるSTACKのシステムの形態が,昨年より大きく変わり,LMSの一つであるMoodleの機能の一つとして組み込まれた。そのことによる,日本語化の対応を昨年末より行ってきており,今年度にそれを完成させる予定である。 また,STACKのオンラインテストの問題の作成・蓄積を継続して行っていくと同時に,電子教科書での利用のあり方を確立させていく計画である。特に,電子教科書とSTACKの連携という枠組みを超えて,電子教科書とLMSとの連携による,新しい電子教科書のあり方にも言及していきたい。同時に,昨年,十分に達成できなかった実際の実験と対比させたシミュレーション教材を蓄積させていく。 そして,いよいよ蓄積された問題を体系化させていくための取り組みを開始する。そのために,トピックマップなどを利用して,上記教材群の関連性を示すことにより,学生の自主的な学習を促す仕組み作りを検討する。
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