教員養成教育におけるICTの活用では、ICTの利点を便利さや効率に求めるのではなく、新たな観点から魅力的なICT活用授業のモデルを開発・実践し、その意義や達成感を体得したICT活用の指導者を養成していくことが重要課題である。 本研究は、これまで筆者らが取り組んできたICT活用授業を振りかえり、「Web2.0」の考え方や、現在の学習者に欠けている「役立ち感」に着目し、思考力・表現力および意欲を高めるICT活用授業を開発することを目的とする。 研究の初年度にあたる今年度は、筆者らが担当する「教育工学」「情報科教育法」の授業を中心に、これまで実施してきたICT活用を振り返り、授業設計や学習効果についての現状分析を行った。すなわち、ICT活用授業では、思考力・表現力を高めるために、学生にデジタル作品(ポスター・グラフ作品・デジタルストーリー作品、スクイーク作品など、授業によって内容は異なる)を制作させる活動を取り入れている。そして、この活動を有効にするため、作品発表会を行い、さらに「Web2.0」の発想で作品についての相互評価や感想を、CMS(ここではMoodle)や「ありがとうカード」を用いて意見交流させた。授業後のアンケートから、授業におけるICT活用の有効性や一定の学習効果を検証できたが、上記の目標を達成するためにはまだ不十分であり、さらなる改善の必要性が明らかとなった。 また、これらの実践と平行して、関連研究の調査や、開発するモデル授業において有効な情報ツールや望ましい情報環境についての検討を続けている。
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