研究概要 |
職人の高齢化と後継者不足により個人に特化した技術・技能の直接的な伝承が困難となった対策として,マルチメディアを活用したデータベース化により,伝統技能の保存と継承を可能にする手法を開発することを目的としている.山口県の角島で使用されてきた木造の漁船を対象とし,製作過程の記録文書,写真,動画のデータベース化を行うと共に,スケールモデルを製作して手法の有効性を確認した.また,3D-CADを用いた寸法および形状,製作過程,加工手順等の復元と保存の可能性を検討した結果,CADの履歴機能が課程と手順の保存に非常に有効に活用できることが明らかになった.また,CAE解析を行うことにより,経験的に設計・製作されている船の強度評価が可能となった さらに,技能の動作を保存するためにモーションキャプチャシステムを用いて,木工作業において加工を施す職人の動きの保存を試みた.鉋掛けの作業を3台のカメラを使用した撮影およびモーションの作成により,2次元的な映像を元に3次元的な情報が得られるようになった.2次元的な映像では撮影を行ったカメラからの視点でしか観察できなかった動きが,3D-CG動画という形で任意の方向からの観察が可能になった また,モーションキャプチャ用の腕と手指の骨格モデルを自作した.これを併用すれば,鉋掛けに限らず,手や指先を使った複雑な作業の様々なモーションの作成・保存が可能となる.以上より,伝統技能の継承者がいなくなった場合でも高精度な情報として技能を後世に残すことを可能にする基礎的な手法が提案できたと考える
|