平成22年度は、顔認識の精度向上と生体情報(脳血流)から得られる集中度と顔の表情や体の動きなどの外観との関連について検討した。まず、顔認識の精度向上のために、顔部品間の距離を特徴量とした主成分得点空間による類別を行った。これには、肌色情報および顔の特徴をもとに顔位置を検出し、部品特徴を顔領域の中で探索して顔部品を検出後、目領域の中で、ハフ変換による円検出を行い目玉の位置を特定して、両目の距離を基準値とした各顔部品間の距離を求め、10次元の特徴量(右目、左目と口の距離など)とした。この特徴量で主成分分析を行い、主成分得点をベクトル空間に射影して、顔画像の類別を行った。多人数の含まれる類中での識別は予め特徴量をSVMに学習させておき、ハイブリッドに個人識別を行う方法を確立した。これにより、学習時間の短縮と精度の向上が実現できた。しかし、類ごとに別々の識別器(結合の重み)を持つことになり、煩雑になるという新たな課題を持つことになった。 集中度については、脳血流測定システム(nIR HEG System)を購入して検討した。既存の研究から脳血流量については集中度によって血流量が増加すると言われており、問題を考えているときの脳血流量の測定と、同時にビデオカメラによる表情・動作を調べ、関連を調べた。問題としては、英文読解、数学問題(計算、グラフ)、国語(漢字の読み書き)について調べた。その結果、問題を考えているときに脳血流が増加し、解き終わってほっとした瞬間や諦めて考えを放棄したときに脳血流量が減少するという結果が得られた。また、表情や動作からは、理解できないときには口や首を動かすなどの余計な動きが多くなること、特に瞬きの回数が圧倒的に増加することが分かり、外見からの理解度の判断可能性を示唆した。
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