研究課題
本研究課題の目的は、科学者の社会的責任の現代的課題について、責任論と科学コミュニケーション論の接点にあたる課題を中心に、事例分析をもとに分析をすすめることである。平成22年度は以下の3つの視点からの分析をおこなった。(1)「責任」をめぐる定義の分析。科学技術倫理事典(C.Mitcham編、トムソン社、2005)における責任概念を整理した。この事典では、責任概念を、法的責任、宗教における責任、哲学における責任、科学の責任、技術の責任に分けて論じ、さらにアングロアメリカンにおける責任概念と、ドイツにおける責任概念の違いを検討している。平成22年度は、まずこの定義の差異を検討し、日本における「責任」という語の使われ方とあわせて検討を行った。(2)米国ハーバード大学で開催された「次世代のSTSに関する国際会議」に参加し、過去20年にわたる米国のSTSのなかで、科学者の社会的責任概念がどのように扱われてきたのかについての知見を得た。また災害における科学者の責任についての知見のレビューを得た。(3)事例分析としては、特に日本で2011年3月に発生した東日本大震災後の津波および原子力事故の対応において、科学者の社会的責任がどのように扱われうるかについて分析をすすめた。とくに災害における事前の「想定」が誤っていたときの専門家の責任はどのように考えたらよいのか、あるいは事故後の専門家の情報発信において、市民を心配させないように安全がわに偏った情報を流すのが専門家の責任であるのか、それともすべてオープンにした上で市民に選択してもらうのが責任かについて検討した。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
労働の科学
巻: 66(10) ページ: 10-13
East Asian Science, Technology and Society : an International Journal
巻: 5 ページ: 381-394