研究課題
今年は生政治学・生権力概念の通覧を行った拙著『〈生政治〉の哲学』(ミネルヴァ書房)を基盤にして、より具体的局面への調査を開始した。なぜなら、この本はそれまでの当該概念の使われ方を巡る一種の概念史だったからである。具体的には、臓器移植法改正に伴う、臨死・瀕死状態の人体についての国家的処遇をめぐる問題について、改めて関係者と議論を行い、多様な問題点を別抉した。それは、まさに2010年から改正された法律が施行されるという状況にあって、社会的重要性を帯びていた。特に長期脳死の状態にある幼児をもつ家族の方々の意見を収集した。その作業と同時に、〈人間圏〉を構成する要件、つまり人間を人間たらしめるものは何かという問題を探った。その際、抽象的な議論に終始することを避け、また、議論を過度に広げることを避けるために、具体的な文化誌的・文学史的・神話的データのなかから、特に〈人間そのものではないが、ほとんど人間〉、〈人間未満の人間〉などという、〈人間圏〉の境界領域にある多様な存在について探った。その過程で本年度は、ユダヤの特殊な泥人形であるゴーレムについての本を公刊することができた。
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L'Evolution creatrice de Bergson(Arnaud Francois ed.,)
ページ: 11-123
死生学研究、東アジアの死生学へII
ページ: 56-71
http://www.p.u-tokyo.ac.jp/~waskana/