初年度は代表者・石原と分担者・小川に協力者・眞岩を加えた3名で研究を進めた。定期的な会合とは別に、メールや電話等で緊密に連絡をとりあいながら、(1)近代産科医の誕生、(2)女医、(3)伝染病予防について、各自が資料収集と分析を担当した。石原・眞岩がドイツ・ヴァイマルおよびベルリンで医学史関連資料を収集する一方、イギリスでは小川がシーボルト家出身の産科医シャルロッテとヴィクトリア女王夫妻(特にゴータ公子アルベルト)に関する資料収集を行った(本資料の整理と分析は次年度の作業として継続)。また国内では、内藤くすり記念館・西尾市岩瀬文庫・伊藤圭介記念館・吉岡弥生記念館(掛川)、北里大学記念室、東京女子医科大学史料室、津山洋学記念館ほかで、資料調査と収集を行った。この成果については、日独近代医学交流を軸にまとめ、一部を公表した。 1.日独近代医学史におけるシーボルト一族の役割:ハンス・ケルナーの著作をベースに、よく知られている日本研究家Ph.F.v.シーボルトの祖父・叔父達が18世紀ドイツ産科・外科学において果たした役割を紹介するとともに、ドイツで医療活動を公認された先駆的存在でもある叔母および従姉妹について調査、ドイツ初の女医エルクスレーベンとも比較した。 2.ドイツ(もしくはドイツ語)と縁の深い日本人女医についても調査をすすめた。荻野吟子や吉岡弥生はもちろん、彼女の周囲でドイツと密接な関わりをもつ女医にも注目、うち明治期に日本人女医として初めてドイツに留学した高橋瑞子、また日本人女性としてドイツで初の医学博士号を取得した宇良田唯のふたりについてはドイツ語で発表・紹介した。
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