研究課題/領域番号 |
22500967
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
常石 敬一 神奈川大学, 経営学部, 教授 (00039786)
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研究分担者 |
田中 美和 国際経営研究所, 客員研究員 (50424833)
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キーワード | 結核 / ワクチン / 地震予知 / 医療政策 / 原子力発電 / 被爆 / 原爆 |
研究概要 |
2011年度、常石は昨年度までの調査分析を踏まえ、結核についての本の執筆を進め、13.に記した著作を刊行した。本研究計画の日本における政官学産一体で進められた結核制圧政策を検証し、それが成功には程遠いものであったことを明らかにしたと考えている。 本書について2011年12月18日、「朝日新聞」の書評において取り上げられた。その一部を以下に引用する。 結核は決して過去の病気ではない。その対策とて、同様だ。結核制圧計画は成功だったのか。著者はそう問い、検証を進めていく。1951年、日本の結核は大きな転機を迎えた。新結核予防法がスタート、34年以来の死因のトップを脳疾患に譲り、その後、死者は激減していく。新予防法の効果とも見えるが、果たしてそうか。 格好の比較対象がある。51年、米軍の下で全く異なる結核対策が始まった、復帰前の沖縄だ。BCG接種を進めた本土に対して、患者の早期発見と在宅中心の投薬治療が行われた。自然感染かどうかの見分けを難しくするとして、米国ではBCGは推奨されていなかった。沖縄での死亡率はその後、全国平均を下回った。新予防法の効果に疑問を投げかける結果だ。 64年には世界保健機関(WHO)が、X線検診はやめ、症状が出た人のたんの検査で診断すること、また、入院ではなく、外来での治療を推奨する勧告を出した。しかし、小中学生のX線検診が原則として中止されたのは92年だ。発病したら即入院して治療という対応は、先進国では日本だけの常識だという。 疾病対策は、きちんとした根拠に基づくべきであることはいうまでもない。これからの医療政策のために、まずは歴史の教訓に学ぶ。貴重な問題提起だ。 ここまでが書評の引用である。今後も日本の科学技術政策および医療政策に資する提言を可能とする研究調査を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
9.に記したように『結核と日本人』を刊行し、結核については一応の分析を終わった。地震については、新生児予想もしなかった大震災の発生により、これまで隠されてきたデータ・事実の発掘が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
東日本大震災によってこれまでの日本におけるいわゆる、地震予知が一部で指摘されていたように机上の空論であることがより説得力を持って語られる状況となった。今後、地震予知にかかわってきた地震研究者がどのような行動に出るか、これまでの「予知学」をどう総括するか、そしてどう方向転換をするかに注目している。しかし実際のところは、今後理論的にありうる巨大地震のリストアップに集中している。この作業はここ数年続くと思われるが、それがロバート・ゲラーの「日本人は知らない「地震予知」の正体』が指摘するような、徒労に終わるか、成果をあげるかを注視している。 3月11日の東日本大震災後の原子力発電所の事故およびその後の政府および原子力開発を進めてきた企業や研究者の振る舞いを通じ、原子力ムラの存在が明らかとなり、本研究プロジェクトのケーススタディの対象である地震学および結核学と、類似の政官産学の癒着の構造が示された。この問題についても調査分析を行う予定である。
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