研究課題/領域番号 |
22500970
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
松原 洋子 立命館大学, 先端総合学術研究科, 教授 (80303006)
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キーワード | サイボーグ医療 / 生命倫理 / 科学技術史 / 人工呼吸器 / 意思伝達装置 |
研究概要 |
現在、機械工学・情報工学と融合した生体工学は、ライフサイエンスや脳神経科学を巻き込みながら先端医療技術を再編しつつある。本研究は、日本の在宅療養における人工呼吸器と意思伝達装置を科学技術史的に検証することを通じ、当事者の生活に根ざしたサイボーグ医療倫理の構築を目指すものである。本年度は、人工呼吸器・意思伝達の研究開発史に関する資料の収集と調査を実施するのと並行して、下記の検討を行った。 (1)身体と意思伝達装置の関係の考察:視線入力装置「アイライター」はALS患者のアートパフォーマンスのためにアメリカで開発された装置で、意思伝達装置としての転用可能性を期待させる。オープンソースのDIYスタイルで制作され、仕様が公開されているアイライターは、意思伝達装置の開発と普及の新しい可能性を示唆する。2011年度はアイライター開発チームの主要メンバーであるJames Powderly教授(弘益大学)との国際ワークショップを実施し、ALS患者のコミュニケーション支援とアート、オープンソースでの開発との関係について議論した。その一部をインタビューおよび解題として『生存学』Vol.5に発表した。近年、感覚モダリティ変換を行う機器の開発がすすみ、インテラクティブ・アートとして一般の人々が機器による感覚変容を経験する機会も増えている。身体と意思伝達装置の関係について考察を深める上で、アートからのアプローチは理論的に重要である。 (2)新生児医療の背景の検討:人工呼吸器利用をめぐる倫理的議論の一つに、重度障害新生児と呼吸障害をもつ子供の治療・ケアに関する問題がある。この問題を検討するうえで、日本における妊娠・出産に関する状況の把握は不可欠である。産科医療と生殖補助医療における産科婦人科学会のガバナンスについて検討し『新通史日本の科学技術』3巻に執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
テーマの複合性に相応して、調査が多角的に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は最終年度となるため、多角化したテーマを収束させ、これまで得た知見の意義の確認と補強に専念し、論点を絞込み執筆活動をすすめる。
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