研究課題/領域番号 |
22500971
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
喜多 千草 関西大学, 総合情報学部, 教授 (10362419)
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研究分担者 |
出口 康夫 京都大学, 文学研究科, 准教授 (20314073)
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キーワード | 科学哲学 / 科学的方法論 / コンピュータ |
研究概要 |
当該年度は、2011年秋にクリーブランドで行われた国際学会(Society for Social Studies of Science年次総会)で、研究計画で目標としていたとおり、EBM(Evidence Based Medicine)と呼ばれる科学的根拠に基づいた医療の方法論について、その手法の日本での定着過程に関するagendaのありようについての二件の学会発表を行った。具体的には、喜多論文で行った歴史的分析では、『今日の治療指針』というスタンダードな治療法を記した刊行物に記された内容を精査し、EBMの概念が各医療分野でいつ頃から導入され、どのように受け入れられていったかについてまとめた。その過程でイギリス型のEBMの他、アメリカ型のEBMからの影響も確認され、新しい手法が定着するまでの従来の価値観との妥協・共栄の方策が探られていたことを明らかにした。また、出口論文で展開した哲学的考察については、EBMという手法そのものがコンピュータ(特にデータベース)の導入と不可分であることに加えて、統計的手法そのものの妥当性が不問にされている傾向にあることを明らかにした。また、双方の論文ともLevels of Evidencesの妥当性について問うという視点を織り込んだ。この論点について、学会の場を活用して、内外の研究者と意見交換することができた。 また、研究の過程であつめたデータの質的研究、および成果公開に資するツール(サーバに資料データを蓄積して、整理・分類等を行うアプリケーション)を開発して研究に活用することにした。このツールを引き続き活用して、最終年度の研究にも生かしてゆきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の提案時の予定と事例研究の対象が変わった部分もあるが、平成23年度に行うことにした医療分野の事例研究では、興味深い科学的方法論の定着過程に関する知見を得ることができた。また、当初は特に予定していなかった質的研究を行うための研究ツールを開発して活用することによって、大幅に作業効率が上がったことにより、計画以上に進展している面もある。
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今後の研究の推進方策 |
科学研究費補助金申請時には、最終年度に学会発表を行うことを目標にするとしていたが、平成23年度に国際学会での発表の機会を作ることができたので、最終年度は成果を論文の形にまとめていくことに集中することとした。 必要に応じて追加調査や研究会等を行いながら、論文をまとめてゆきたい。 また、研究用ツールも続けて活用し、必要に応じて改良等を行い、成果公開にも活用したい。
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