平成24年度は、北海道東部の常呂川河口遺跡から出土した木製品(住居建築材を含む)の観察・分類や、木製品(特に住居建築材および構築材)の一部に対して、試料採取・プレパラート作製し樹種識別をおこなった。加えて平成23年度に実施したプレパラート作製によって針葉樹・広葉樹に樹種識別した木製品について、属レベルまで樹種識別が可能であるかどうかを再検討した。また、住居建築材の分類をおこなうため、類例検討、発掘調査で確認された建物址の検討(主に柱穴)を実施した。 1.建築材、道具類と分類できる資料の内、約100点を抽出し、樹種識別のためのプレパラート作製や樹種識別をおこなった。平成23年度までにおこなった樹種識別の内、再検討の必要性が生じた木製品について属レベルまでの識別をおこなうため、再サンプルを実施した。 2.平成22年~平成24年度までの樹種識別結果から、資料選別し同定できた範囲内で広葉樹が9割、針葉樹が1割の比率と確認できた。広葉樹材ではヤナギ属、コナラ属コナラ節、トネリコ属が主体とわかり、花粉分析などで明らかとなっている遺跡周辺の古植生(針広混交林)において主に、広葉樹材を入手していたとより明らかになった。その結果の一部については、取りまとめ、学会で発表した。 3.近年の発掘調査で確認された、アイヌ文化の平地式住居址を集成し、学際的(考古学、建築学など)な資料検討をおこなった。特に、平地式住居址で確認された柱穴の発見状態や埋没過程の把握が常呂川河口遺跡で発見された建築材を分類する上で重要であると確認した。 4.樹種識別を実施する過程で、ブナ属1点を確認した。現在、天然林としてのブナ属分布の北端は北海道寿都郡周辺とされる。道央部の遺跡(千歳市キウス4遺跡)でブナ属が発見されていたが、今回のブナ属の発見は道東部の遺跡における初めての事例で、樹木利用を考える上で貴重な成果となった。
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