平成24年度は、前年度までに揃えた分析システムに不足分を追加して完成させ、本研究の目的に適う分析を目指して、さまざまに工夫を試みた。 東京大学総合研究博物館および沖縄県立博物館の協力を得て入手した化石骨試料を中心に、骨象牙質試料、歯象牙質部試料、歯エナメル部試料のそれぞれについて、放射性炭素年代測定法に対して適切な前処理法を試み、比較検討した。 本研究は、当初、主に骨象牙質における外来炭素の汚染の混入状態を精密に分析することを目差したが、昨年度までの進行状況から判断し、その目的のために、限外濾過による分析の効果をを試すことにした。これを試行した結果、当初期待したほどの成果は得られず、現時点においては効果的な方法として確立することができなかった。その原因として考えられるのは、限外濾過によって得られる分画試料が、ロスにより非常に少なくなってしまうことである。そのために最終的な放射性炭素測定に必要な前処理後試料の絶対量を確保することが非常に難しくなり、実用するにはまだ問題点の多いことが確認された。この点については、今後引き続き改良を行っていくべきことと考えるが、これを保留したとして、次の段階におけるアミノ酸分析については、実際に分析を行える設備が整い、研究上大変有用な状況にもっていくことができた。本研究も含めた一連の研究で目指している最終的な目標に、本格的に切り込むことが今一歩できなかったが、極めてそれに近いところまで進めることができた。最終目標までには、まだまだ多くの問題を抱えている状況であるが、今後も引き続き検討を重ねるべき方向性が見えてきたことは、ある程度の成果であると考えている。 もうひとつの大きな課題として、骨象牙質、歯象牙質、歯エナメルの部位ごとの事情による年代値のばらつきについての検討を行い、大変有用な結果が得られた。これについては、今後発表していく予定である。
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