研究概要 |
(1) 福井県丹生山地の姶良Tnテフラと大山倉吉テフラを挟む河岸段丘堆積物からの連続試料の古地磁気測定結果を整理し,5万年前から2万年前までの地磁気永年変化を明らかにした(藤井ほか,2010)。偏角変化には2万年周期と3500年周期が,伏角変化には2万年周期,7400年周期と5500年周期がみられた。この永年変化では,偏角の変動幅は25゜Wから10゜E,伏角のそれは35゜から60゜であった。これまでの福井県内の古地磁気測定結果からは,過去10万年間の地磁気永年変化は,本研究で明らかにした変動幅の範囲内であったと推定される。 (2) 福井大学でこれまでに採取したすべての広域テフラについて岩石磁気的分析(熱磁気天秤を用いた熱磁化曲線,MPMSを用いた低温磁気特性,およびIRM獲得曲線)を進めている。ようやく姶良Tnテフラの分析がほぼ終了し,同テフラはX□0.4のチタノマグネタイトが主な磁性鉱物であり,副次的にX□0.1のチタノマグネタイトが含まれていると結論できた(鳥居・藤井ほか,2011)。ただし,1/3近くの試料には上のチタノマグネタイト以外の磁性鉱物の存在も示唆されたが,これらはテフラ堆積時のコンタミネーションによるものと推定される。 (3) 最近になって山口県の阿蘇4火砕流堆積物はAso-4-I,Aso-4-II,Aso-4-III,Aso-4-IVの4部層に細分された。その区分の論拠としての定置温度(藤井ほか,2008)の違いが注目されているため,同火砕流堆積物から新たに試料採取を行い,熱消磁方による定置温度の推定を実施している。これまでの推定結果はAso-4-IIが500℃,Aso-4-IVは400℃となっている。またAso-4-IIIは残留磁化そのものが不安定で定置温度は推定不能であった。
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