研究概要 |
岡山・鳥取県に分布する大山上部火山灰層の連続測定により2.5万年前から1.7万年前までの約8千年間の地磁気永年変化を明らかにした(藤井・中島,2011)。西南日本における過去2千年の永年変化と比較すると,偏角の変動幅はよく似ていて20°Wから20°Eまでの変化がみられたが,伏角は非常に緩やかな変化しかみられなかった。また,弥山軽石層(MsP:1.8万年前頃)の時代に地磁気エクスカーションがあった可能性を指摘した。 大山上部火山灰層を構成する各テフラ層からは交流消磁により安定な残留磁化成分を抽出できたが,今回の調査地域の大山倉吉テフラ(DKP)からは安定な残留磁化成分を抽出できていない(藤井・中島,1998)。また,DKPは他の広域テフラと比較すると地域差が大きいという測定結果がえられている。これらDKPの古地磁気測定結果の特徴が,岩石磁気的性質に起因するのかどうかを確かめるため,いままでに採取している全広域テフラ(DKP,姶良Tnテフラ,鬼界アカホヤテフラ,阿蘇-4テフラ)と新たに採取したDKP試料について,高知大学コアセンターの熱磁気天秤による岩石磁気的測定を実施している。まだ予察段階ではあるがDKPと他の広域テフラの間には岩石磁気的性質に本質的な差は認められていない。 現在,共同研究者である鳥居雅之氏や広岡公夫氏を中心に既存の考古地磁気測定結果について,再測定を含めた見直しが行われていて,日本における地磁気永年変化研究の出発点となる過去2000年間の地磁気永年変化曲線の改訂作業が進行している(「日本の考古地磁気学刷新をめざす基礎的研究」ワークショップ,2012)。この成果を先史時代の地磁気永年変化研究にも反映させるため,広域テフラの古地磁気測定結果についての再整理に着手した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に完成予定の南九州地域における約10万年前までの地磁気永年変化曲線を,前年度までにすでに得られている北陸地域,山陰地域からの地磁気永年変化曲線と比較検討し,地磁気永年変化曲線の精度を高める。この地磁気永年変化曲線を基礎として,既報の各広域テフラ噴出時の地磁気分布,そして研究協力者である鳥井雅之氏や広岡公夫氏らによる過去2000年の考古地磁気永年変化曲線の再検討の結果を総合し,先史時代の地磁気永年変化曲線を確立する。
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