研究概要 |
1.和歌山県那智勝浦町と田辺市大塔村で,平成23年台風12号の豪雨により露出した堆積層中に新たに鬼界アカホヤテフラ(K-Ah)が研究協力者により確認され,K-Ah試料を約50個採取し,古地磁気測定を行った。今までに報告したK-Ahと同様に安定した残留磁化が得られその方位もほぼ同じであった。既測定のデータの大部分が九州からのものであったため,近畿からのデータを追加できたことにより「K-Ahが噴出した約7000年前の日本列島の地磁気分布に大きな地域差は無く,地心双極子磁場で予想される範囲内である」ことをさらに明確に示すことができた。 2.約5万年前の磁気図作製を目標に大山倉吉テフラ(DKP)の古地磁気測定を集中して実施したが,不安定な試料が多く,磁気図を作製するにはまだデータが不足している。また,DKPは他の広域テフラと比較すると地域差が大きいという測定結果が得られている。 これらDKP測定結果の特徴が岩石磁気的性質に起因するのかどうかを確かめるため,これまでに採取している全広域テフラと新たに採取したDKP試料について,高知大学コアセンターの熱磁気天秤による岩石磁気的測定を実施した。まだ予察段階ではあるが,各テフラはそれぞれ独特の磁気的特徴を示すだけでなく,給源からの距離に関係した違いも示しているのではないかと思われる。 3.現在,考古地磁気研究者によって既存の考古地磁気測定結果について,再測定を含めた見直しが行われていて,日本における地磁気永年変化研究の出発点となる過去2000年間の地磁気永年変化曲線の改訂作業が進行している。この成果を踏まえ本研究による福井県丹生山地の河岸段丘堆積物および岡山・鳥取県に分布する大山上部火山灰層の連続測定で明らかになった過去5万年間の地磁気永年変化曲線について再検討している。
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