研究課題/領域番号 |
22500978
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研究機関 | いわき短期大学 |
研究代表者 |
山崎 京美 いわき短期大学, 幼児教育科, 教授 (60221652)
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キーワード | 縄文遺跡 / 魚骨 / アトラス / データベース |
研究概要 |
本研究では縄文時代の生業復元に寄与する魚類遺存体の基礎的研究のため、貝塚からの出土頻度が高い魚を中心に考古学者向けの骨格アトラスを作成する研究を進めている。本年度も次年度からの継続として、本州、(特に関東地方)の沿岸や内陸貝塚で最も出現頻度の高い魚、周知性の高い魚、また縄文人の主要漁場と推定される淡水域と汽水域で出土が予想される魚を研究対象とし、研究協力者や魚類学者らに協力を依頼し、標本収集に努めた。東日本大震災の原発事故により関東地方の標本収集(特に淡水魚)では影響が生じ、限定的な収集とならざるを得なかった。収集できた標本数は当初の予定である72種中、52種である。具体的には、ニシン科6種、カタクチイワシ科1種、ウナギ科1種、クロアナゴ科1種、ハモ科1種、キュウリウオ科1種、コイ科4種、ドジョウ科2種、サヨリ科1種、ボラ科1種、スズキ科2種、キス科1種、アジ科2種、タイ科5種、サバ科3種、タチウオ科1種、ハゼ科3種、フサカサゴ科4種、アイナメ科2種、コチ科1種、ヒラメ科1種、カレイ科3種、フグ科5種である。これらのうち、骨格標本を作製したのは38種である。そして、タイ科、サバ科、アイナメ科、コチ科、カレイ科、フグ科では前上顎骨、主上顎骨、歯骨、角関節骨、第1・2・3脊椎骨を対象に描画を行い、画像データを作成した。顎骨では原則として外側面観、内側面観、上面観、咬合面観を、脊椎骨では原則として側面観、前面観、上面観、底面観を描画した。一方、遺跡出土の魚骨情報に関するデータベース構築においては、関東地方の遺跡発掘調査報告書や関連する文献について346点を収集し、一部をデータベースに入力した。なお、今年度はこれらデータベースをホームページに公表する予定であったが、年度内に実施はできなかったので、次年度への継続課題として残された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度は標本収集および骨格標本作製に集中して実施する計画であったが、原発事故による放射能汚染が予想以上に拡大し、関東地方周辺を産地とする魚種(特に淡水魚)を収集することが難しかった。加えて、研究代表者の病気のために活動範囲が限定的であったことも遅れた理由となった。
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今後の研究の推進方策 |
上記11の理由から現在までの達成度は計画よりも遅れているため、今後は当初予定した対象魚種(71種)すべてを網羅した冊子体のアトラスを作成する計画を軌道修正し、科や属レベル単位で標本収集を充実し、それらまとまったグループを対象に同定法を研究し、論文や学会発表などで成果を公表していく方策をとる予定である。
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