研究課題/領域番号 |
22500980
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
降幡 順子 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (60372182)
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研究分担者 |
肥塚 隆保 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 客員研究員 (10099955)
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キーワード | 鉛釉陶器 / 古代ガラス / 製作技法 / 産地推定 / 鉛同位体比 / 材質分析 |
研究概要 |
本研究は、さまざまな古代ガラス・釉薬の材質とその物性に着目して、古代ガラス・釉薬の製造技術や加工方法について検証する事を目的としている。 今年度の古代ガラスに関する調査では、工房遺跡出土遺物(製品・未製品・坩堝類)に対して材質・物性調査をおこなった。また鉛釉陶器に関しては、東海地域の窯跡から出土した資料および消費地遺跡出土資料に対して材質調査をおこなった。調査内容は、蛍光X線分析により胎土と釉薬の化学組成を明らかにし、X線回折分析により焼成温度を推定することをおこなった。さらにガラス・釉薬の鉛同位体比分析も実施し、鉛原材料産地の推定をおこなった。古代ガラスの物性調査は、ガラス参考(標準)試料を昨年度とは異なる化学組成の試料を製作し、ガラス転移温度などの測定をおこなった。これらの測定では、現象が高温かつ不均一の場で進行するため、少量のサンプリング調査が可能な場合であっても、複数回の実験は難しい。そこで蛍光X線分析による成果を活用し参考試料を製作することにより、遺物からのサンプリングを避け、実験に要するサンプル量に関わる問題を回避している。 12世紀から13世紀の工房遺跡出土ガラスについては、遺物の所属時期により鉛原料の推定産地が異なることを明らかにすることができた。また国内産の鉛原材料の使用が開始される時期とその坩堝の型式との関係、また緑釉陶器とは鉛原材料が異なる点なども明らかとなった。東海地域から出土した緑釉陶器のから胎土を微小量採取して希土類元素に関する胎土分析をおこなった。その結果、地域差による化学組成の差異は顕著に検出できなかったが、10世紀から11世紀の緑釉陶器の胎土のなかで、特徴的な希土類元素についての手がかりを示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査を希望した窯跡資料に関しては予定通りの調査が完了し、データ結果が出始めているため順調に進展しているといえる。しかしガラスの作業温度範囲に関する実験では、測定回数が予定よりもやや遅れているため、今後回数をより増やしていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今の目指すべき方向として(1)前年度までの調査結果を参考に引き続き資料調査を行う、(2)予定よりもやや測定回数が少ないガラスの物性調査については、より重点をおき測定回数を増やしていく、(3)諸外国の事例をさらに調査し当時の交流について調査を推進する、という目標を掲げて調査をおこなっていく。最終年度であるため、できるだけ早い時期に資料調査をおこなえるようにし、得られたデータを総括していく。
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