研究概要 |
平成22年度予算において実施したボーリングコアの採取,およびそれらのC-14年代測定,粒度分析,珪藻分析について,平成23年度では,これらを継続して実施するとともに,既存コアを利用して諸分析を行った.また,岩木川下流域における既存のボーリング資料を収集し十三湖周辺のデルタ構成層の三次元構造を検討した.その結果,以下のことが明らかになった. 調査地域は完新世初頭に縄文海進により汽水環境となり,7,400calBPには塩分濃度の高い内湾であったこと,その後,約5,700~2,900calBPまで十三湖は比較的水深がある,淡水の影響が極めて大きい湖であった.この原因は,縄文海進において形成された内湾が砂州の形成により閉塞的な環境となったこと,さらに,当時の十三湖は,現在よりも容積が大きく,湖内で塩分躍層が形成され,海水の流入があっても湖底付近に貯留され,湖水の表層は淡水が優先していたことを明らかにした.その後,水深が小さくなった十三湖は,約1,000年前には汽水環境が成立する.また,本研究では,これまで定性的な検討のみで議論されていた古水環境の変遷を,GIS(地理情報システム)を用いて定量的に検討することに成功した. 今年度の成果は,従来,縄文海進以降,汽水環境が継続していた十三湖においても,大きな環境変化があったことを示している.十三湖は,今後生じると予測される環境変化,また人為のインパクトに対して敏感に反応する地域である可能性が高いと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
平成22年度および23年度の研究を継続するとともに,高密度のボーリング資料についてGISを援用し,千年~百年オーダーのタイムスケールで湖の形態や容積変化を明らかにする.また,過去20年程度の十三湖の深浅測量の成果を用いて,人為のインパクトが及んだ時代における地形変化形傾向を把握し,縄文時代中期以降との変化と比較検討をする予定である.
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