持続可能な水利社会の構築は、環境と資源保全の最重要課題として認識されている。持続可能な水利社会の姿を明らかにし構築していくにはフィールド知を重視した地理学研究を推進し、子どもや市民の水リテラシーを高め、社会全体の問題発見・解決能力の向上が必要であるとの観点から研究を実施した。平成22~24年度の3年間における研究実績概要は以下の通りである。 (1) 調査対象としたのは、平成19~21年度科研調査からの継続を含めて、西日本を中心に沖縄県本島・宮古島・石垣島、鹿児島、熊本、四万十川、出雲平野、琵琶湖、大垣、長野、静岡、山梨などの地域であり、いずれも生活産業面で地下水など身近な水資源の依存が高く、地下水資源の枯渇や汚染に直面し、住民、行政、研究者の連携協力のもと地下水の保全と管理に取り組んだ実績を有する地域である。こうした先進的事例を通して、持続可能な水利社会の姿とその構築に向けての指針は明確化されたと考える。 (2) これらの事例地域の多くには、地域の水文環境と水循環系の変容について子どもや市民が体験的に理解を深めることのできる水の博物館・資料館等の学習施設が整備されている。こうした諸施設の特色と活動概要の把握を通して、当該地域の子どもや市民だけでなく来訪者に対しても、当該地域の水文環境と人間生活の深い関わりの歴史を多角的、総合的に学ぶための資料展示やプログラム開発の実態が解明された。 (3) こうした現地調査で得られた成果を踏まえて、次代を担う子どもや市民の水リテラシー醸成を支援する方策として、水のフィールドミュージアム、水のエコミュージアムについて検討を深め、過去3年間の研究成果概要を報告書(2013年3月,121p.)を刊行し討議資料とすることにした。
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