本研究は,日本列島における第四紀地史を解明する研究の一部として,関東において第四紀に降下堆積した全テフラの層序を構築することを目的とする.このため本研究では,未記載のテフラが多い前期更新世に着目し,房総半島,銚子地域,関東平野西縁丘陵に分布するテフラ,また,東京都内のボーリングコア中に保存されている地下テフラの記載岩石学的特性を明らかにする.平成24年度は,八王子市,昭島市をはじめとする東京多摩地区のコア調査,また銚子地域等でおもに140万~78万年前に降下したテフラを調査し,最終年度として関東全域の標準的な第四紀テフラ層序をまとめることを計画した.研究成果として,八王子コアに含まれる全テフラの採取と基礎的な岩石記載,昭島コアの一部テフラの記載,また立川コアの約半数のテフラの採取と基礎的な岩石記載が完了し,それぞれのコアの一部テフラについて既存テフラとの対比ができた.具体的に対比できたテフラとして,Kd44-Nkkテフラ(八王子コア),SYGテフラ(昭島コア), 屏風ヶ浦Ob4b-1テフラおよびTmg-R4テフラ(立川コア)がある.また,テフラ層序の高精度化をめざし,銚子地域において178~200万年前の層準と90~100年前の層準で肉眼により識別できる全てのテフラの採取と岩石記載を実施した.また前年度,北関東塩原カルデラを給源とする塩原大田原テフラが東北地方下北沖の太平洋海底堆積物より検出されたが,この成果を踏まえて塩原大田原テフラの分布を再検討し,新たに福島県内の数地点においても検出することができた.以上のデータと平成22・23年度に取得したデータ,ならびに既存研究の資料を元に関東全域の標準的な第四紀テフラ層序をまとめた.
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