研究課題/領域番号 |
22500988
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
小野寺 淳 横浜市立大学, 都市社会文化研究科, 教授 (50292206)
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キーワード | 中国 / グローバル・シティ / グローバル都市地域 / 都市構造 / 人口流動 |
研究概要 |
本研究は、人口流動に注目しつつ現代中国における大都市の空間構造とその変容過程を実証的に解明することを目的としている。今年度は、沿海部のみならず内陸部の各大都市・地域を訪問することができた。具体的には、北京市、貴州省貴陽市、重慶市、および四川省成都市において、現地の研究者との意見交換や現地調査・資料収集を行った,また、関連する論文等の執筆と発表を進めている。 北京では、北京大学政府管理学院副院長で地理学専攻の李国平教授に会い、中国の地理学の動向、北京の都市空間の変容、沿海部における地域労働市場の状況などについて意見を交換した。貴陽は、中国南西部の貧困地域であると同時に、多くの出稼ぎ労働者を送出する地域としてもよく知られてきたが、近年になってそうした状況に変化の兆候が見られた。貴陽の中心市街地では再開発が進行し、近郊農村の経済状況も急速に改善されていることがうかがわれた。こうした状況の変化は、地元での雇用吸収力の増大を意味しており、これまでの沿海部へ向かう大量の出稼ぎ流動を次第に転換させ、沿海部の「民工荒」(出稼ぎ労働者不足)を招来していることが了解できた。重慶は西南中国の中心地であり、外国資本の流入も極めて活発であり、その目覚ましい経済発展と人々の生活水準の向上がやはり印象深かった。成都では中国科学院成都山地及災害研究所の方一平研究員(教授)に会い、西南中国における地理学研究の傾向や、四川・成都地域の動向などについて意見交換をすることができた。 研究発表は、3冊の図書への参加と1本の論文の執筆を通じて行った。『中国』では、特に人口の観点から現代中国を概観し、人口流動の説明に多くのスペースを割いた。『中国年鑑』では、産業の空間的な動向を分析したが、とりわけ内陸部と沿海部の関係に注目した。『西北中国のいま』では、内陸部における都市と農村の変容について多面的に考察を行った。また、『地学雑誌』へ投稿中の「中国の地理学」では、中国の経済地理学や都市地理学の経緯を解説する部分が、本研究課題と大きく関連している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学内業務等に追われて研究時間の確保がなかなか難しく、現地調査は年度末にずれ込んでしまったが、結局は当初の目論見のように、数人の研究者とお会いしたり各地の都市や農村の状況を調べたりすることができた。論文等の発表も着々と行っている。
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今後の研究の推進方策 |
2012年度は本研究課題の3年目(最終年度)になる。そのため、研究時間をよく確保することに努め、今年度も現地調査を継続して実施すると同時に、これまでに得られた知見・データに関する考察と研究成果の発表に専心したい。
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