アメリカ西岸域、カスケード山脈において、非森林性植生(草原・低木)の分布および変動の背景として重要である林野火災の歴史が過去の山地の土地利用とどのような関係にあるのかを明らかにするために、ブルーリバー流域およびその周辺地域(36000ha)における若齢林(一斉林)の分布を1946年撮影の空中写真で判読し、0.5ha以上の面積を持つ林分についてオルソ写真上で図化した。これらの一斉林の林齢を、既存の年輪データと、新たに得た年輪コア試料、伐採地にある切り株から得た年輪情報などを用いて推定した。また、GLO Survey Platsや旧版の地形図、関連する文献などからブルーリバー流域の土地利用の歴史を推定し、過去の土地利用の空間パターンの復元を試みた。そして、本地域の土地利用の時代変化に着目して1800-1946年の期間を6つの時期に区分し、時期ごとに土地利用と一斉林分布の関係を分析した。その結果、一斉林を形成するような強度の火災は先住民が利用したトレイルの近くに集中していなかったこと、ヨーロッパ人による羊の山地放牧が行われていた1800年代後半には、より多くの一斉林が放牧トレイルの近くに形成されたこと、1960年代以降にもっとも人為的影響にさらされてきたマッケンジー道路沿いには一斉林の分布が集中していたことなどが明らかになった。前年までの成果と考え合わせると、非森林性植生のうち低木林は地形・土壌条件と積雪条件に規定されて安定的に出現するのに対し、草原には、その分布場所や分布域の変動に火災発生頻度の変化の影響を受けるものと、地形・土壌条件に規定されて安定的に成立しているものが存在し、前者の草原の変動については過去の山地利用の変遷が関係していると推測される。
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