研究概要 |
本研究では,東南極内陸山地での地形・地質学調査を実施し,1)氷床変動の痕跡(氷河地形)の認定と,2)表面露出年代に基づき詳細な氷床高度変動史の復元を行う.そして,3)第四紀における氷床高度低下の時期,空間分布,原因,そして地球気候システム変動への影響を解明することを目的とする セール・ロンダーネ山地中部の詳細な現地調査に基づき,氷河地形の認定と氷河堆積物の風化度評価を行った.この結果,セール・ロンダーネ山地では,過去に700mもの氷床高度の低下起きたことが示された.また,風化度評価に基づく氷河堆積物のステージ分けを行い,東南極氷床高度が段階的に低下した可能性を示した.そして,この氷床高度の低下イベントに年代軸を与えるため,基盤岩・迷子石試料を用いて表面露出年代測定を行った.岩石の前処理をニュージーランドのカンタベリー大学で,^<10>Beの加速器質量分析をGeological Nuclear Science,NZで行い,計24地点における詳細な表面露出年代値を明らかにした.この結果は,氷河堆積物の風化度ステージ分けと非常に整合的であり,セール・ロンダーネ山地における東南極氷床高度が,過去200万年間に約700m低下した可能性が高いこと,特に急激な氷床高度低下が中期更新世に起きたことを示す.一方,ステージ1,2に対応する氷河堆積物が酸素同位体ステージ5以降の温暖期に堆積したこと,さらに,最終氷期(LGM)以降では氷河堆積物の堆積が約14ka以降に始まったことが明らかになった.この事は,東南極氷床の融解はMeltwater Pulse 1A (Clark et al., 2002)の急激な全球的海水準の上昇には寄与しておらず,その後緩やかに融解をしていることを示し,他の東南極氷床から報告された結果(Mackintosh et al., 2007 ; 2011)と整合的である
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