研究課題/領域番号 |
22500992
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研究機関 | 国際日本文化研究センター |
研究代表者 |
北川 淳子 国際日本文化研究センター, 研究部, プロジェクト研究員 (90571703)
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キーワード | 環境史復元 / 花粉分析 / 高時間分解精度 / 年縞堆積物 / 歴史記録 |
研究概要 |
22年度に採取した11本のコアの年縞堆積物の縞のカウント及び、年輪年代学を応用して年縞の連続性を調査した結果、2.92%の縞の欠如が確認された。そして、6月にイギリスで研究協力者と分析の方針の打ち合わせをした。また、22年度に行った花粉分析の結果の一部を米国セントルイスで開かれた植物学の合同大会で発表した。そして、年縞の年代の確実な2本のコアの上部(1920年から1980年)の花粉分析を行い、モダンアナログ法による気候復元を試み、気象データと比較した。年平均気温の復元では1年ごとの復元で気温の上昇、下降をある程度反映していうことがわかった。しかし、よく一致する部分とそうでない部分があり、さらに検討が必要である。気温は夏が低く、冬が高く復元される傾向にある。気象データのパターンには春夏より秋冬のほうがマッチする。降水量についてはどの年の復元も平均値に近く、復元はあまり良い結果とは言えない。降水量の復元には問題があるようである。また、記録にある米の不作の年とイネ科の花粉の流入量の比較を行ったが、深見池は長野県でも南部にあるため、長野県の作柄のデータとあわせて愛知県または静岡県のデータとの比較も検討する必要がありそうである。 バイオマイゼーションと定量的気候復元の精度向上のために表層花粉試料を採取も行った。目標を上回る22地点での採取をした。22年度に採取したものの分析はほぼ終わらせているが、23年度分は現在分析中で、両方のデータを今後の定量的気候復元に反映させる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
歴史記録年代軸の決定、焦点としている時代の花粉分析はほぼ終わっているが、表層花粉のデータの整理が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今まで知られていなかった年縞堆積物の採取地点による不連続性が明らかになり、その結果を踏まえて年代のはっきりしている部分での花粉分析結果が得られている。それを基に気候復元をして、どの程度の精度があるか実際の気象記録と比較検討中で、さらに詳しく分析を進め、花粉分析の精度を深見池を例にして、論文を国際誌に投稿する予定である。それにあたり、表層花粉データの分析・整理を早急に進める。また、歴史記録の1つとして、米の不作について検討を進めている。深見池の位置の関係上、長野のみでなく、東海地方の不作も花粉データには現れていることが解ってきた。東海地方の不作のデータも整理し、さらに検討の上、国際誌に発表する予定である。
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