深見池の12本のコアの年縞を比較し、下部の薄い層でも平均1cmあるにも関わらずコアにより欠損があることがわかった。湖沼全体に均一に堆積するのではなく、場所により堆積量が変化していた。平均すると年縞の3%程度の欠損が認められた。年縞堆積物でも3%程度の誤差があることを踏まえて復元結果を考察していくことが必要である。 長野県の歴史記録によると、周辺では環境に関連した歴史的な出来事が多数記録されている。堆積物のイベント層と比較すると堆積物から復元出来る出来事は限られているが、少なくとも湖沼の周辺で起こった洪水や大地震などの出来事ははっきりと記録されていた。 花粉分析結果では、周辺の植物を含む多くの花粉分類群が検出されていることから、周辺の植物相を反映したものであると言える。1900年代には植物相は大きく変化していなかった。バイオマイゼーションでの潜在自然植生の復元結果を気象庁の観測データと比較すると、かなり微妙な気候の変化による植生変遷が反映されていた。湖の堆積物が周辺の植生の微妙な変化をとらえていたと言えるだろう。また、日本でのバイオマイゼーションの精度は非常によいことがわかった。 定量的気候復元では、新たに分析した40地点の表層のデータを加え、気温と降水量の復元をし、比較した。降水量と春と夏の気温の復元が難しいことがわかった。その他は比較的よく復元される。しかしながら、1年毎の復元では、平均値は実測値に近い値に復元されるものの、相関が悪い。10年~20年程度のまとまりで相関が良くなる。最近の傾向として、高分解能の分析がなされるようになってきているが、1~5年というような高分解の分析では実際の気候が反映されているかどうかはわからない。この結果はあくまで長野県深見池の花粉分析結果によるもので、他地域について同様のことが言えるかどうかは不明である。今後の検討が必要であろう。
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