研究課題/領域番号 |
22500993
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研究機関 | 地方独立行政法人北海道立総合研究機構 |
研究代表者 |
高田 雅之 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 環境科学研究センター, 研究主幹 (40442610)
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研究分担者 |
鈴木 透 酪農学園大学, 環境システム学部, 助教 (20515861)
三島 啓雄 北海道大学, 大学院・農学研究院, 学術研究員 (60534352)
小野 理 北海道立総合研究機構, 環境科学研究センター, 主査 (20557285)
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キーワード | 生物多様性 / 種多様性 / 景観要素 / 地理情報システム / リモートセンシング / 生態系保全 |
研究概要 |
テーマ1の動植物分布情報に基づく種の多様性尺度の構築について、昨年度に引き続き図鑑情報をもとに、植物及び鳥類の分布特性(北方型・南方型・大陸型・固有種等)に関するデータベースを構築し、景観生態学的な地域区分との関係分析に向けて、全ての指標データの作成を完了した。 テーマ2の景観要素に関する地図の構築について、湿原生態系に着目した種の多様性地図を構築したほか、平地における景観レベルの多様性を評価する上で、河道の蛇行度を含む複雑性に着目した地図作成を試みた。1920年代作製の5万分の1地形図に記載されている河道の中心線を抽出し、河川の各区間におけるBankfull depthを推定しその2~3倍の水深時に湛水する範囲を求め洪水攪乱の影響範囲とした。現在種の多様性との関係解析中である。 テーマ3の景観要素と種の多様性尺度の関係性分析について、サロベツ湿原における湿原の景観構造とその変化が湿原に生息する鳥類とその多様性に与える影響を評価し、併せて湿原の景観構造の変化について分析した。これを全道に拡大する観点から、1920年代以降の湿原の変化について分析し、時期に応じて消失・縮小・分断の変遷を明らかにした。 テーマ4の種の多様性尺度に応じた保全手法の提起について、保全手法の検討に際し、明治期以降の土地利用の変遷に関わるGIS基盤情報を整備し、低地における農地化の進行に伴う景観構造の変遷を解析し、地理条件に応じた変遷傾向の相違について分析した。現在多様性尺度との融合を検討しており、長期的な人口減少に伴う農地の減少などを考慮しつつ、広域的・多角的な視点から、農地を森林や湿地へと再生することにより多様性保全に寄与すると考えられる地点を抽出する手法について検討中である
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
テーマ1については予定どおりデータ整備と尺度構築を完了した。テーマ2については流域・地形に着目した新たな空間区分図を開発することができた。テーマ3については、湿原生態系をモデルケースとして、テーマ1及び2と連携しつつ土地利用の時系列変化と併せた広域的な解析を進めた。テーマ4については時系列の景観構造分析をとおして、テーマ1のデータを用いたホットスポットの抽出と現保護区域とのギャップ分析を試み、景観的視点からの保全の在り方の検討を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
種の多様性尺度と景観要素を用いて、広域的な視点から生物多様性の保全の在り方を提起するという目的に向けて、23年度に取り組んだ各テーマの研究を引き続き進める。加えて24年度においては、生態系の質を評価するための合成開口レーダの活用手法を提起すること(テーマ2)、湿原生態系をモデルケースとして統計的手法により、広域的視点から保護の優先度を明らかにすること(テーマ3及び4)、将来アジア地域における生物多様性の効果的な保全に向けて、本手法の適用可能性についても検討を加え提言を行うこと(テーマ4)を実施し、より実用的な成果として取りまとめる。
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