研究概要 |
芋川流域や魚野川流域で検出されたテフラを給源近くまで遡って対比を検討するなど、魚野川周辺の段丘編年をより明確化することにより、活褶曲の成長速度の計算など、地殻変動と地形発達史の関連性の解明に努めた。その結果、魚野川流域は古い方から、高位面3段(H1~H3)、中位面3段(M1~M3)、低位面4段(L1~L4)に区分することができた。芋川流域の最も古い段丘面(L3)から検出されたテフラは、破間川沿いの低位段丘から検出されたテフラ(Ab-t1)に対比される可能性がある。魚野川流域の低位面(L2).から検出されたテフラは、浅間火山から約16,500年前に噴出した浅間一草津火山灰(As-K)に対比される可能性が高い。L3面はAs-Kを載せないので、約7,500~16,500年前に形成された面と推察される。芋川流域に新しい地形面しか存在しないのは、芋川流域の隆起速度が極めて大きいためと考えられる。芋川上流と下流でのL3B面の現河床との比高差から小松倉背斜の成長速度を求めると、0,8~1.9×10^-6/年となった。長野県・新潟県県境付近の地震では、逆断層の上盤側の地殻変動量の大きな地域において、地形や地質、褶曲等の地質構造、既存活断層の分布に支配される形で地盤災害が集中しており、今回の地震に伴い松之山背斜が成長した可能性が指摘できた。 斜面崩壊の発生の程度は、地震による隆起量(活褶曲の成長量)との対応が良い。隆起量は中越地震で1m程度、長野県・新潟県県境付近の地震で20cm強、中越沖地震で10cm弱であるが、斜面崩壊の発生密度もその順番で多い。東山丘陵の東山背斜や小松倉背斜の成長速度は、後期更新世や完新世における小千谷地区の活褶曲の成長速度とオーダー的に同レベルである。なお、同じ東山丘陵内でも斜面変動量に差が出ているが、地震による隆起量の他に、地すべり地形末端の下方谷壁斜面における浸食量の違いなど、地形発達史的な視点での斜面形成過程のステージの違いなどの地形的な素因も、影響を及ぼしていると考えられる。
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